食事炎症指数って知っていますか?

怪我をした時や風邪をひいた時に起こる急性の炎症は、傷の治りを早くし、ウイルスや細菌を死滅させ、病気の回復を高めるものです。しかし、くすぶるように続く慢性的な炎症は、体を疲弊させ、がん、心臓病やアルツハイマー病など様々な病気の発症に関わることが知られています。

肥満や糖尿病は、AGE(終末糖化産物)の形成を促進させて慢性の炎症を引き起こしますが、これまで日々の食事と慢性炎症との関連性についてはあまり研究が進められてきませんでした。

そんな中、2014年にサウスカロライナ大学のチームが、我々が日頃摂っている45種類の食品や栄養素に関して、体にどのくらい炎症を引き起こす作用があるのかについて調べ、その程度を数値化することに成功したわけです。

その後、この指数を用いて様々な検討が行われていきました。その結果、炎症を引き起こす可能性の高い食品を多く摂っている人たちでは、がん(特に大腸がん)の発症率や死亡率がそれぞれ25%、67%高まること、心臓病のリスクもおよそ2倍に跳ね上がること、総死亡率が30%上昇することが明らかとなっています。

つまり、AGE(終末糖化産物)を含めた日々の食事のありようによって(何を食べるかによって)、我々の寿命は決められてしまっているのかもしれません。ちなみに、炎症をひきこす栄養素の代表格は、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸でした。また、カロリーの摂りすぎも食品の種類に関係なく、体に慢性の炎症を引き起こしてしまうようです。

一方、炎症を抑える働きのある栄養素や食品は、食物繊維、お茶、イソフラボン(大豆)、フラボン(セロリ、パセリなど)などのようです。「食事炎症指数」、是非、覚えておきたい言葉です。

(文:山岸昌一)

山岸昌一先生(久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学講座教授)

1989年金沢大学医学部卒。1995年金沢大学医学部講師。1999年米国ニューヨークアルバートアインシュタイン医科大学に内科研究員として留学。2008年より現職。内科医。日本糖尿病学会、循環器学会、高血圧学会の専門医。糖尿病と心臓病の研究から老化の原因物質AGEに着目。AGEに関する最新データを次々と発表し、その英文論文数は580編を超える(2018年時点)。AGE研究で、アメリカ心臓病協会最優秀賞、日本糖尿病学会賞、日本抗加齢医学会奨励賞などを受賞。最近では、「ためしてガッテン」、「あさイチ」、「たけしのみんなの家庭の医学」、「夢の扉」などのテレビ番組や5大新聞で研究成果が大きく取り上げられる一方、「AGEを抑え、老化を防ぐ方法」について一般向けに啓蒙活動も行っている。著書に「老けたくなければファーストフードを食べるな」(PHP新書)、「老けない人は焼き餃子より水餃子を選ぶ」(主婦の友社)、「AGEためないレシピ」(パンローリング社)、「exAGEハンドブック」(AGE研究協会)など。

何を食べるかは自由。

便利になった現代、いつでも手軽に食事ができるようになりましたが、全ての人が同じように健康というわけではありません。何を食べるかは、自分で選択しなければなりません。食事と健康維持には学習(知識)が必要です。

老化は止めることはできませんが、食の知識を持ち、日頃から心がけることで、そのペースを遅らせることは可能です。老いても元気に暮らしていくには、少しでも早くから生活習慣の改善に取り組むべきではないでしょうか。